ドラックラグの解消に向けて -精神科診療所の果たす役割-

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 欧米で開発・発売された新薬が日本で使用が認められ発売されるまでには、国内での治験実施と審査などのため、非常に長い時間がかかります。一般的に欧米との発売時間差は約2.5年程度と言われており、日本と欧米との新薬承認の時間差、あるいは、海外で新薬が先行販売され、国内では販売されていない状態をドラッグ・ラグ(drug lag)と呼んでいます。

 精神科治療薬では、他の領域と比べてドラッグ・ラグが長くなる傾向があります。たとえば抗うつ薬のドラッグ・ラグの期間は、パロキセチン(8年)、ゾロフト(15年)、ミルタザピン(19年)、デュロキセチン(6年)、エスシタロプラム(9年)となっています。うつ病など精神疾患では、ある治療薬で十分な効果がみられるのはおよそ投薬を受けた患者さんのおよそ3分の2であり、効果の少なかった残りの3分の1の患者さんも他の治療薬に切り替えることで、効果が得られる場合が少なくありません。ですから精神科ではできるだけ多くの治療薬のオプションがあることが重要です。これまでは、日本では精神科治療薬のドラッグ・ラグが非常に長く、患者さんの側から見た治療薬のオプションが極端に少ない状況にありました。

 このようなドラッグ・ラグの解消に向けて、多くの製薬会社は海外で実施された治験のデータを日本国内の申請に利用する方法として、日米欧、世界各地において同時に実施する国際共同治験が多くなってきていますが、もう一つの傾向として、治験を精神科診療所で行うことが多くなりました。精神科診療所では治験契約の手続きにかかる時間が少なく、院長が治験責任医師であるため治験に対するモチベーションが高く、アクセスが良い施設が多いため治験広告で集めた被験者が行きやすいというメリットがあります。神戸臨床薬理研究会では、治験レベルの向上のための情報交換、勉強会を通じて、所属する診療所が質の高い治験施設となり、ドラッグ・ラグの解消に役立ちたいと考えています。

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